接触角ってなんだろう?|身近にある 「ぬれ」のはなし(教えてニッ君1)
何も知らない”はじめてさん”は、上司から「せっしょくかくで調べて」と指示されました。 でも、初めて聞く言葉で何なのか分かりません。なんだろうかと考えているうちに、上司は会議に行ってしまいました。同僚も忙しそうにしていて、聞けるような雰囲気ではありません。
どうしようかと悩んだはじめてさんは、知り合いの”ニッ君”のことを思い出しました。知らないことは知らないけど、知っていることは知っている物知りな知人です。そこで聞いてみることにしました。 教えて、ニッ君。困ったときのニッ君頼みです。
はじめてさんは、さっそくSNSで聞いてみました。
接触角が何なのか、どういう目的で使われているかを知るのです。
接触角は、身近なたくさんの物の性能を調べるための指標として使われているのだと、はじめてさんにも分かりました。
- 接触角がどのような製品の性能評価や洗浄確認に使われているか
- 「ぬれ」を数値化することで得られる具体的なメリット
- 正確な測定を行うために欠かせない「前提条件」の考え方
そもそも接触角ってなに?

はじめてさん
上司から「せっしょくかく」で調べてと言われたんだけど、何のことか分からないんだ。教えて。

ニッ君
接触角なら、任せてください。

はじめてさん
漢字はそう書くんだね。接触する角? 角って将棋の?

ニッ君
角行の動きのような、斜めの直線はイメージが近いですね。でもそうではありません。

はじめてさん
そしたら、何だろう。角界? 角館? かくかくしかじか・・・・・・う~ん。

ニッ君
角度です。

はじめてさん
あ! そうか。やっぱりそうだと思ったんだ。それで、何が触れあう角度なの?

ニッ君
百聞は一見にしかず。こういうものです。

はじめてさん
ああ、この角度ね。でもこの画像は何?

ニッ君
ガラス面の上に水滴を置いて、横から見た画像です。

はじめてさん
どうなってるの?

ニッ君
逆さ富士みたいに、ガラス面に反射しているから初見では不思議な形に見えますね。この見え方では、反射像があることで液滴の端点の位置を確認しやすくなります。

はじめてさん
液滴の端点?

ニッ君
両端のこの部分のことです。

はじめてさん
この端点を通る接線と境界面の角度を、接触角と言うんだね。

ニッ君
はい。この角度が高いか低いかで、「ぬれやすい」か「ぬれにくい」かが分かります。
接触角は何に使う?|身近な6つの活用例

はじめてさん
接触角というのがどこの角度かは分かったけど、これを何に使うの?

ニッ君
機能や性能評価、または洗浄評価に使われています。

はじめてさん
具体的には?

ニッ君
身近なところでは、傘やレインコートが水を弾くかどうかの評価。
車のフロントガラスやボディーコーティングの性能評価に使われています。
また半導体の製造工程で、ウェハーなどの洗浄評価などで使われています。

はじめてさん
色々なことに使われてるんだね。それが全部接触角で分かるの?

ニッ君
はい。すべてではありませんが、接触角は評価指標の一つとして使われています。液体と固体の間で実際に起きている「ぬれ」を、角度として数値化できるからです。
接触角は、液滴のぬれ方を数値化する、代表的な指標と言えます。

はじめてさん
でもでも、接触角はただ何かの上に落とした液の角度を測るだけなのに、どうして色々な用途に使えるの?

ニッ君
わかりやすくまとめると、こうなります。
1.洗浄性評価|半導体ウェハーや精密部品で活用
ガラスの場合を例にします。無垢のガラスは親水性の高い素材です。ここに水滴を置くと、薄くぬれ広がります。清浄度にもよりますが、清浄なガラス表面では水がよくぬれ広がり、接触角は小さくなります。一方、皮脂や有機物などが付着すると、水がぬれにくくなって接触角が大きくなることがあります。
同一材質・同一測定条件で良品や洗浄前後を比較すれば、接触角の変化を清浄度評価の指標として利用できます。
2.撥水性評価|傘・レインコート・自動車ボディコーティング
傘やレインコートのようにぬれて欲しくない物は、撥水性が高いかで評価します。接触角が高いほど、その素材に対して水がぬれにくく、撥水傾向にあると評価できます。
自動車のボディーコーティングは撥水するタイプが多いですが、目的によっては、親水するタイプも使われています。
なお、実際の水滴の滑りやすさまで評価する場合は、静的接触角だけでなく、接触角ヒステリシスや滑落挙動も確認します。
3.印刷性能評価|インクと紙の相性
インクと紙の相性評価とも言えます。紙といっても、世の中には表面の状態はさまざまです。最近では使われなくなってきた年賀状でも、普通紙、インクジェット紙、インクジェット写真用のように用途によって異なります。
たとえば普通紙にインクジェットプリンターで印刷すると、色にじみや発色の悪さに気づくことになります。普通紙では、インクが表面で広がるだけでなく、紙内部へ浸透しやすいため、にじみや発色に影響することがあるからです。ここではインクジェットプリンターとインクを使う前提になりますので、紙の側で調整することになります。インクが染みこみすぎないように、逆に弾かないように、適度なバランスを保った用紙が必要となります。このため、インクと紙の接触角を測って評価します。なお、接触角はインクが紙表面でどのようにぬれるかを評価する指標の一つです。
4.コンタクトレンズ表面のぬれ性評価
コンタクトレンズの表面では、涙液が均一に広がるぬれ性が重要です。ぬれ性が低いと涙液層が不安定になり、乾燥感や摩擦が増えることがあります。また、レンズ下の涙液の状態は、ぬれ性だけでなく、レンズの種類や形状、フィッティング、動きなどにも影響されます。
こうしたコンタクトレンズ表面のぬれ性を評価する指標の一つとして、接触角が用いられています。同じ測定法・条件で比較する場合、一般に接触角が小さいほど水にぬれやすい表面と評価されます。
5.医療カテーテルの表面ぬれ性評価
尿道カテーテルや血管内カテーテルなどがあります。いずれも人の体内に挿入されるため、表面の滑りやすさやぬれ性が重要になります。カテーテルには親水性表面処理が用いられるものがあり、その表面のぬれ性を確認する指標の一つとして接触角を利用できます。
6.メガネ・鏡の防曇評価
曇る原因は、微小な水滴が表面に付着して光が乱反射することです。つまり、微小な水滴が表面に多数形成され、その曲面で光が散乱することで曇って見えます。そこで、表面を親水化して、薄い水膜として広がりやすくすることで、光の散乱を抑える方法があります。
お風呂場の鏡が曇っても、お湯を掛けると見えるようになるのと同様の効果です。ただこの場合はすぐにまた曇るのですが、シャンプーの泡など界面活性剤を含んだ水分で表面に流すと、水の表面張力が低くなり鏡にぬれ広がりやすくなるため、一時的に水が広がりやすくなることがあります。
このように、防曇(ぼうどん)効果を確かめるために、接触角で評価します。
接触角で性能評価|原理と前提条件

はじめてさん
結局は、接触角を測るだけなんだね

ニッ君
そうです。だからこそ、簡単に測れるのです。

はじめてさん
どのくらいの違いが分かるの?

ニッ君
ナノメートルオーダーの薄膜厚さの違いに応じて、接触角が変化した研究例もあります。簡単に測れますが、微小な違いにも反応することがあるという奥深さがあります。
ただし、違いを検出できても、その原因まで特定できるわけではありません。

はじめてさん
どういうこと?

ニッ君
接触角測定は簡単である反面、分かる情報も限られています。
そのため、何の液体と何の固体表面を測ったかだけでなく、液量、着液後の測定時間、温湿度などの測定条件をそろえ、記録しておくことが重要です。こうした記録は、次の段階でより詳細な分析を行う際にも役立ちます。
また、何を目的とした測定かも踏まえていなければなりません。接触角が高い・低いことが、性能が良い・悪いこととはイコールではないからです。

はじめてさん
わかった。ありがとう。

ニッ君
どういたしまして。
まとめ
1. 接触角とは何か
固体(ガラスやプラスチックなど)の表面に液体を置いた際、その“液滴の端点における接線と固体表面がなす角度”のことです。
角度が低い(小さい): 液体が広がりやすく、「ぬれやすい」状態。
角度が高い(大きい): 液体が玉になり、「ぬれにくい(弾く)」状態。
なお、測定方法や装置の選び方は接触角とは|測定方法・装置の選び方で詳しく解説しています。
2. なぜ接触角を測るのか
液体が固体表面でどのようにぬれるかを、角度として数値化できるため、製品の性能・機能や、洗浄前後の表面状態を比較する指標となります。
3. 具体的な活用事例
洗浄性の確認、傘・レインコートの撥水性、印刷時のインクと紙の相性、コンタクトレンズ表面のぬれ性、カテーテルのぬれ性、メガネの防曇など、身近な製品から半導体ウェハーの洗浄評価まで幅広く活用されています。とくに製造現場での歩留まり改善では、工程ごとに測定して、原因候補を絞り込むのに役立ちます。
*つまり接触角とは*
接触角は「測るだけ」というシンプルな手法ですが、「何の液体と固体を、何の目的で、どの条件で測るか」を管理することで、ものづくりの現場で奥深い指標として活用できます。

ニッ君
ところではじめてさんは、どんな仕事をしているのですか?

はじめてさん
え? な、なんだろう。部長に聞いてみる。

ニッ君
それはやめた方がいいですよ。