コラムColumn

2026.5.28

接触角計とは?|得られるデータと測定のコツ (教えてニッ君3)

教えてニッ君~~その3

接触角を測定して何でも解決できると、意気込んでいたはじめてさん。 自信満々に指示書を作成したところ、現場からはクレームの嵐。 上司に呼び出されてまた小言の数々。そのうるささに閉口して、仕入れたばかりのとっておき接触角ネタでレクチャーを始めたのです。


ところが上司は苦い顔。 「本当に接触角計を知っているのか」という失礼な言葉にムッとして「完璧に知ってます」と答えてしまいました。


すると、現場に行ってレクしてこいと命じられたのです。 でも、本当は接触角計なんて触ったことがありません。AIに聞いても何が何やらよく分かりません。でもいまさらそうは言えないので、困ってしまいました。5月病を理由に会社をサボろうかと思うほどでしたが、ボーナス査定に響いたら一大事と奮起したはじめてさん。


教えて、ニッ君。困ったときのニッ君頼みです。


はじめてさんは、さっそくSNSで聞いてみました。 接触角計って、そもそもどういうものなのか?

こうしてはじめてさんは、接触角計が、液滴をカメラで撮影して自動で解析してくれる便利な装置だと知るのでした。

この記事でわかること
  • 接触角計が「液滴を真横からシルエットとして捉える」という基本的な仕組み
  • 全自動による全面測定には、液滴の配置順序など条件が必要な理由
  • 光軸方向に液滴が重なっていると正しく測定できない理由
  • 超撥水試料などで液が付着しない(着液しない)場合に改善するための3つのテクニック
  • 測定で得られる情報には、1次データ(画像)から3次データ(グラフ)まであること

ところで接触角計とは?

はじめてさん はじめてさん

ねえニッ君、接触角”計”ってなに?

ニッ君 ニッ君

いきなりいまさら、という感じがしますが、こういうものです。たとえば、LSE-ME51というのがあります。小型なので机の脇に置いて気楽に測定できます。

LSE-ME51の写真
はじめてさん はじめてさん

いや、そうじゃなくて、どうなってるの?

ニッ君 ニッ君

測定の仕組み(原理)のことですか?

はじめてさん はじめてさん

そう、それ!

ニッ君 ニッ君

液滴を真横から見るので、単純化するとこういう図になります。

液滴を横から見る概略図
はじめてさん はじめてさん

さっそく見てみたけど、なんか違うよ。この前はこんな画像だったよね。

前に見た接触角の画像
ニッ君 ニッ君

それは、影絵のように投影した影を見ているからです。

はじめてさん はじめてさん

影絵??

投影された液滴を測る

ニッ君 ニッ君

液滴の背後から光を当て、液滴と背景の明暗差を大きくして輪郭を捉えます。イメージとしては液滴のシルエットを見るような状態です。

はじめてさん はじめてさん

じゃあ、懐中電灯で照らして見れば・・・・・・

ニッ君 ニッ君

まぶしいので、止めましょう。目を痛めますよ。

はじめてさん はじめてさん

おっと危ない。でもでも、それで、画像がモノクロなのかな?

ニッ君 ニッ君

そうです。液滴の輪郭を明暗差として捉えるため、色情報よりも輪郭を明瞭に取得できるモノクロ画像が適しています。

はじめてさん はじめてさん

カラーだとダメなの? よく葉っぱに付いた水滴の写真とかあるよね。

葉っぱ上の液滴画像
ニッ君 ニッ君

接触角測定のように輪郭形状を解析する用途では、モノクロカメラが適しています。

はじめてさん はじめてさん

どうして?

ニッ君 ニッ君

具体的な話は、少し専門的になるのでまた別の機会にして、今回の一番の目的を優先してはどうでしょう。

はじめてさん はじめてさん

あ、忘れてた。接触角計がどういうものか知りたかったんだ!

接触角計の仕組み|構成(光源・ステージ・カメラ)

ニッ君 ニッ君

接触角計は、こうなっています。

接触角計の構成GIFアニメ
ニッ君 ニッ君

カメラと光源(照明)の間に測定対象となる試料を載せるステージがあります。ステージの上側には、液体を吐出させるディスペンサーが取り付けられているのが一般的な構成です。

はじめてさん はじめてさん

雨粒みたいに、液を落とすんじゃないんだね?

ニッ君 ニッ君

方法については一長一短がありますが、たとえばJIS R 3257:1999の静滴法では、注射器内の蒸留水を試験片上に「水滴として静置する」方法が規定されています。つまり、この試験方法では、液滴を落下させて衝突させるのではなく、試料面に静置して測定します。

*JIS R 3257:1999では、基板ガラス表面の水に対するぬれ性試験を対象としています。
はじめてさん はじめてさん

やっぱりそうだよね。それで、液を置いたらどうなるの?

ニッ君 ニッ君

ソフトウェアが液滴画像を解析し、設定した解析法に基づいて接触角を算出します。基本操作はシンプルです。

接触角を測定する主な作業

1)ディスペンサの針先に、液滴を作る。

2)ステージを操作して、液滴を試料面に着液させる。

*複数箇所を測定する場合は、これを繰り返します。

*測定モードでは、ソフトウェアが自動で着液検出して測定画像を記録します。

はじめてさん はじめてさん

確かに、簡単そうだね。

まずは接触角を測ってみる

ニッ君 ニッ君

固体試料面に液滴を置いて側面から撮影するという基本操作自体は、簡単です。

ニッ君 ニッ君

一方、接触角は固体のごく表面の状態に敏感です。目視では区別できない汚染や吸着、表面処理状態などの違いが、接触角の変化として現れることがあります。

接触角の表面感度については、ナノメートルオーダーの薄膜厚さや表面被覆率の違いに応じて接触角が変化した研究例もあります。このため、接触角測定は表面状態の変化を検出する手段として有効です。

ニッ君 ニッ君

ただし、接触角だけから「何が付着しているのか」「どの元素や化学結合が変化したのか」まで特定できるわけではありません。原因の同定が必要な場合は、XPS、AES、SIMSなどの表面分析と組み合わせて考えます。

ニッ君 ニッ君

その意味でも、まず接触角を測定して、どこでぬれ性が変化しているのかという現象を記録することは、表面状態を調べる入口として有効です。

はじめてさん はじめてさん

現象を記録?

ニッ君 ニッ君

接触角計は測定器ですが、重さを測る電子天秤や長さを測るノギスなどのように数値を出すだけではなく、画像を記録するからです。

接触角計から得られるデータについて

この記事では便宜上、得られる情報を次の3段階に分けます。

1次データ:元画像

取得される生データとなる、画像が記録されます。
このため、元画像を利用した再解析が可能となります。

2次データ:画像解析による数値

接触角や液滴の幅や高さなどが、画像解析によって求められます。

3次データ:数値や連続画像を整理したグラフ・動画

経時変化のグラフや、動画。
 (経時変化測定により、時間という情報を取得していれば、時間経過による変化をグラフで見られます。また画像を元に、動画にして一連の変化の様子を確認することもできます)

はじめてさん はじめてさん

画像に始まり動画に終わるということだね。

ニッ君 ニッ君

扱いやすいのは、接触角などの数値化されたデータです。一方で分かりやすいのは画像や動画になりますので、用途に応じて使い分けます。

はじめてさん はじめてさん

つまり、測定は簡単で、1次データの画像も残るので、どこに違いがあるのか分かるってことだよね。

ニッ君 ニッ君

そうです。測定位置と接触角を対応させれば、ぬれ性に差がある位置を把握できます。
その上で、表面分析など別の評価方法と組み合わせて原因を調べます。

全面で接触角を測りたい

はじめてさん はじめてさん

全面測るのが普通だよね。

ニッ君 ニッ君

コーティングの性能が全体で均一かどうかを判断するには、本来であれば全面を測定しなければなりません。

はじめてさん はじめてさん

だよね。でも現場からは文句だらけで、困るんだ。せっかく万全を期して全面測るように指示書を書いたのに、なんで?

ニッ君 ニッ君

ですが現実的には、測定面をマトリックス状に分割した複数点測定になります。これでも作業としては手間がかかります。

はじめてさん はじめてさん

なんだ。みんな楽したいのか。だったら全自動で測ってくれる装置ならいいんだね。何かある?

ニッ君 ニッ君

全自動全面測定ができる、LSE-A220というのがあります。

LSE-A220の画像
はじめてさん はじめてさん

よし、買ってもらおう!

ニッ君 ニッ君

ありがとうございます。ですが待ってください。全自動測定でも、全面を測るには条件が必要になります。

はじめてさん はじめてさん

どういうこと?

ニッ君 ニッ君

先ほど見ていただいたように、液滴を横からカメラで見るため、見ている方向と同一線上に、前に測定した液滴があると、液滴が重なって見えるので正しく測定できないのです。

液滴が重なる事例の画像
はじめてさん はじめてさん

これで全自動全面測定なんて、嘘つきだ。

ニッ君 ニッ君

いえ、嘘ではなく、先に測定した液滴が十分に揮発し、次の液滴の輪郭を遮らない状態になっていれば測定できます。

はじめてさん はじめてさん

なんかだまされた感が・・・・・・

ニッ君 ニッ君

物理現象なので、理想と現実の違いには悩まされます。このため、実際の測定条件は、理想的な条件から実現可能な条件に落とし込む作業を経て、決める必要があります。たとえば、こんなふうに。

測定の工夫

・測定済みの液滴を、次の測定に影響しない方法で除去する。
  *拭き取りによって表面状態が変化する試料では、測定位置や測定順序を工夫します。

・乾燥が早い場合は、次の測定位置を遠くにして測定し、乾燥する時間を稼ぐ。

・前に測定した液が邪魔にならない位置を工夫して測る。

*どの位置を測定するかを事前に決めるための、実験が必要になります。全品全面測定して検査すると、検査工数が膨大になるため、品質を担保するために重要な箇所を決めて、測定する工夫をします。

はじめてさん はじめてさん

なんだ知ってるよ。ニッ君を試しただけだから。
(検査工数やばい。まったく気にしてなかった)

ニッ君 ニッ君

ではもう、大丈夫ですね。

はじめてさん はじめてさん

じゃ、さっそく言ってくる。

ニッ君 ニッ君

これで解決することを願っています。

撥水が良すぎて着液しない?

はじめてさん はじめてさん

現場に言ったら、全面測定以前の問題だって。

ニッ君 ニッ君

どういうことでしょう?

はじめてさん はじめてさん

測れないって言われた。

ニッ君 ニッ君

前に測定した液の影にならないようにしても、測れないとはどういう状況か、もう少し詳しく教えてください。

はじめてさん はじめてさん

液が試料に付かないんだ。

ニッ君 ニッ君

針先に作成した液滴に、試料面を付けても液が針先に残った状態と言うことですか?

たとえばこんな状態です。

はじめてさん はじめてさん

そうそれ(だと思う)

ニッ君 ニッ君

撥水性の高い試料では起こりやすい現象ですね。このような場合にいくつか試してみる対策があります。

はじめてさん はじめてさん

それ、教えて! 早く!

ニッ君 ニッ君

こんな感じです。

着液とは?

ディスペンサの針先に作成した液を試料側に移すことを着液と言います。着液のしやすさは、液体の試料面に対するぬれ性だけでなく、針に対するぬれ性、針径、液滴量、試料と液滴の接触状態などの影響を受けます。清浄で親水性の高いガラス面などでは、液はガラス面に自ずとぬれ移ります。

逆に、撥水コーティングされた面を持つ試料の場合は、液滴が試料面へ移行しにくくなり、針先に留まろうとします。また一般に、針径が大きくなると液滴と針との接触領域も大きくなり、条件によっては液滴が針側に保持されやすくなります。撥水性の高い試料では着液しにくくなることがあります。

撥水性の高い試料への着液方法

1)針を細くする。

2)フッ素コーティング針を使う。
 針表面のぬれ性を低下させ、液滴が針側に残りにくくすることで、試料側への液離れを促します。

3)液量を増やす。
 液量を増やすと液滴に働く重力も大きくなるため、着液しやすくなる場合があります。ただし、液滴を大きくしすぎると重力による形状変形が大きくなり、解析結果に影響します。
たとえばJIS R 3257:1999の静滴法では、水滴容量を1~4 μLとし、4 μL以下では水滴形状を球の一部とみなせるとしています。
このため、着液だけを目的に無制限に液量を増やすのではなく、解析条件との両立が必要です。。

はじめてさん はじめてさん

分かった。ありがとう。

ニッ君 ニッ君

どういたしまして。

はじめてさん はじめてさん

これでもう、文句も出ないね。

ニッ君 ニッ君

文句ではなく指摘だと思いますよ。

まとめ

1. 接触角計の仕組みと構成

接触角計は、固体表面に置いた液滴を真横から撮影し、その形状から接触角を求め、ぬれ性を評価する装置です。

構成:光源(照明)、試料を載せるステージ、液体を出すディスペンサー、カメラで構成されます。

画像の特徴: 輪郭をはっきりと際立たせるため、背面から光を当てて液滴と背景の明暗差を利用し、液滴のシルエット像として撮影します。

2. 得られる3つのデータ

測定によって、以下の3段階のデータを取得・活用できます。

1次データ(画像)

生データ。後から再解析が可能。

2次データ(数値)

画像解析で算出された接触角、液滴の幅・高さなど。

3次データ(変化)

時間経過による変化を記録したグラフや動画。

3. 実用上の課題と工夫

全自動で全面測定を行う際には、物理的な制約を考慮する必要があります。

液滴の重なり

真横から見る性質上、手前の液滴が奥の液滴を隠してしまうため、測定順序や乾燥時間を考慮した配置(サンプリング箇所の選定)が重要です。

着液の難しさ

超撥水材料などは、液が試料に付着せず針先に残ることがあります。

対策

針を細くする、針自体に撥水コーティングを施す、測定条件の許容範囲で液量を調整するなどのテクニックが有効です。

つまり接触角計とは

接触角計とは、固体表面に置いた液滴を横から撮影し、その画像から接触角を数値として求める装置です。基本操作はシンプルですが、目視では捉えにくい表面状態の変化を、ぬれ性の違いとして画像と数値で捉えることができます。
ただし、接触角から直接分かるのは「ぬれ性の違い」です。その背景に表面状態の違いがある可能性はありますが、原因物質や化学組成までは接触角だけでは特定できません。正確な評価には、「液を置く位置」や「着液のさせ方」などの測定条件をそろえ、必要に応じて表面分析など別の評価方法と組み合わせることが重要です。

接触角については『接触角とは|測定方法・装置の選び方』をおさえると役割が分かりやすくなります。
また、現場での『歩留まり改善の進め方』や、装置がない場合の『受託測定』もあわせてご覧ください。

はじめてさん はじめてさん

それはそうとして、フッ素コーティング針、あるの?

ニッ君 ニッ君

ございます。

はじめてさん はじめてさん

じゃあ、購入手続きして届くまで、会社を休みながら考えよっと。

ニッ君 ニッ君

それは、まずいと思いますよ。

#教えてニッ君
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